COLUMN
公開日:2023.05.31
ウェルビーイングとは、身体の健康だけでなく精神的・社会的に幅広く良好な状態を目指すことを表す言葉です。企業にとってウェルビーイングが重要な理由や実践するメリット、ウェルビーイングを実現している企業の取り組み事例を紹介します。
ウェルビーイングという言葉を耳にしたことがあるものの、具体的に何を表しているのか、なぜ注目されているのかはっきりと分からないと感じていませんか? 実は、企業にとってウェルビーイングを実践していくことは非常に重要な取り組みの1つとなっています。
今回は、ウェルビーイングの定義や企業にとって重要な理由、導入するメリットについて解説します。ウェルビーイングを実現している企業の取り組み事例もあわせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
はじめに、ウェルビーイングの定義と構成要素について解説します。ウェルビーイングとはどのような考え方なのか、知識を整理しましょう。
ウェルビーイング(Well-being)とは、身体の健康だけでなく精神的・社会的に幅広く良好な状態を目指すことを指します。WHOでは、「健康」について次のように定義しています。
健康とは、身体的・精神的・社会的にすべてが良好な状態を指しており、単に病気・病弱ではないことを表しているわけではありません。
(※出典:WHO「世界保健機関(WHO)憲章とは 」)
身体が健康であっても精神的に満たされていなかったり、社会的に不遇な環境に置かれていたりすれば、「良好な状態」とはいえません。ウェルビーイングは、人間にとっての「健康」を総合的に捉え、望ましい状態を目指す考え方なのです。
ウェルビーイングは次の5要素に対する満足度から構成されています。
人生の一側面だけを捉えて「健康であるか」「良好といえるか」を判断するのではなく、総合的に見てバランスのよい状態になっているかを重視していることが分かります。ウェルビーイングは、人生の総合的な満足度を高めるための概念と捉えてください。
近年、企業にとってウェルビーイングが重要な意味をもつと考えられるようになりつつあります。なぜ企業にとってウェルビーイングが重要といえるのか、主な理由を見ていきましょう。
テクノロジーの発展に伴い、私たちは多様な働き方を実現できるようになりました。必ずしも同じ時刻・同じ場所に出勤しなくても、生産性の高い働き方が実践できる環境が整いつつあるからです。テレワークや在宅勤務がその好例といえるでしょう。
人生100年時代に突入したことにより、社会人として現役で働く期間も長期化しています。誰もが同じ企業で定年退職まで働き続けるとは限らず、転職やキャリアチェンジも一般的なものになりつつあるのが実情です。
人材の流動化が進むにつれて、職場環境が好ましくないと感じている従業員は容易に他社へと流出するようになりました。企業がウェルビーイングに取り組むことは、人材の流出を防ぐためにも重要な施策といえます。
消費者の価値観が多様化・細分化している現代においては、価値を提供する企業側も多種多様な人材が活躍できる場を提供する必要があります。異なる価値観やバックグラウンドをもつ従業員が活躍できる環境を整備することは、企業としての競争力や優位性を強化する上で重要な要素です。
ダイバーシティの観点では、年齢や人種、使用言語、ジェンダー、職務経験など、さまざまなタイプの従業員を受け入れていく・活躍の場を提供していくことが企業に求められています。ダイバーシティの広がりは、企業にウェルビーイングが求められる要因の1つといえるでしょう。
企業がウェルビーイングを重視していくことにより、具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。主なメリットとして、次の5点が挙げられます。
前述の通り、ウェルビーイングは身体の健康のみならず、人生に対する総合的な満足度の向上を図る概念です。仕事に対するやりがいや労働力に対する正当な対価を得られていると実感し、充実感を得られることによって従業員の幸福度は高まっていきます。
結果として勤務先への愛着や信頼が強化され、従業員エンゲージメントの向上につながっていくでしょう。従業員エンゲージメントの向上を目指せることは、企業がウェルビーイングを導入する大きなメリットといえます。
従業員の満足度が高まることにより、離職率の抑制につながります。退職を希望する従業員が減っていけば、新たに人材を募集・採用するコストを抑えることができるでしょう。
国内の人口が減少に転じた今、少子高齢化がますます加速していくことは確実となりました。今後は労働人口も縮小していくことから、新規採用者数の抑制は人材確保の観点においても重要な課題の1つです。採用コストの抑制と安定的な人材確保の実現につながることは、企業がウェルビーイングを実践するメリットとなるでしょう。
誰もがいきいきと自分らしく働ける職場を目指すことは、優秀な人材の確保にもつながります。人材の流動化が加速している現代においては、企業は人材を「選ぶ」側であると同時に「選ばれる」側でもあるのです。優秀な人材ほど、転職先の職場環境をシビアに見ているケースは少なくありません。
ウェルビーイングの実現に向けて積極的に取り組んでいる企業は、優秀な人材から「選ばれる」企業になっていくでしょう。今後は人材の獲得競争がいっそう激しくなっていくことが予想されるからこそ、企業がウェルビーイングに取り組む意義はより大きくなっているのです。
従業員が働きがいを感じ、いきいきと仕事に従事できる環境を整えることによって、プレゼンティーズムの改善につながります。プレゼンティーイズムとは、従業員が何らかの問題を抱えており、出勤しているものの業務の効率が下がっている状態を指す言葉です。従業員が良好とはいえない状態で業務に向き合うことは、企業にとって損失にもなりかねません。
企業がウェルビーイングへの取り組みを強化することは、従業員のプレゼンティーイズムを改善し、生産性を高めることにつながります。これまで潜在的に失われていた生産性を取り戻す意味でも、ウェルビーイングは重要な意味をもっているのです。
労働安全衛生法第3条では、企業は労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善に取り組まなければならないと定めています。健康経営®(※※)の実現を目指して改善を重ねることは、企業にとっての義務なのです。
ウェルビーイングを実現するための取り組みは、労働安全衛生法第3条をより高いレベルで体現することにつながるでしょう。健康経営®を実現していくためにも、ウェルビーイングへの取り組みが求められています。
※※健康経営®は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
ウェルビーイングを実現している企業は、実際にどのようなことに取り組んでいるのでしょうか。具体的な取り組みの事例を紹介しますので、自社でウェルビーイングを目指す際にぜひ役立ててください。
従業員の健康増進に役立つ活動やイベントを取り入れる試みです。一例として、次のような活動が挙げられます。
健康経営®を掲げるだけでなく、具体的な取り組みとして活動やイベントの機会を設けることが大切です。継続的に実施することにより、従業員の行動変容につながるでしょう。
身体の健康だけでなく、メンタル面でのケアを行っていくことも重要なポイントです。以下のような取り組みが想定できるでしょう。
従業員がメンタル面での不調を感じているとき、自身の状態を的確に把握するとともに、第三者に相談できる環境が整っていることが大切です。内面が健康な状態を維持しやすい環境を整備することは、業務効率化や生産性向上の実現にもつながります。
法定外福利厚生を充実化させていくことも、ウェルビーイングの具体的な取り組みとしておすすめです。従業員の心身の健康に寄与する取り組みとして、次の例が挙げられます。
転職希望者の中には、福利厚生をチェックしている人材も少なくありません。企業としてウェルビーイングにどの程度取り組んでいるかのバロメーターにもなる要素のため、福利厚生の仕組みを導入するのは効果的な方法といえるでしょう。
従業員が働く環境の整備に取り組むことも、ウェルビーイングの一環といえます。たとえば、次のような取り組みは実践しやすい事例といえるでしょう。
オフィス環境は、従業員間のコミュニケーションにも深く関わる要素です。環境の改善ありきで捉えるのではなく、従業員にとっての働きやすさを重視する必要があるでしょう。
従業員が困っていることや悩みを相談できる窓口があることは、今すぐに相談する予定がない場合も安心感につながります。さまざまなニーズに対応できる相談窓口を設置することで、従業員から相談を受け付けられる体制を整えましょう。
過度な長時間労働が、心身の健康に深刻な影響をもたらすことは広く知られています。労働時間・残業時間を随時記録していくことにより、個々の従業員にどの程度の負担がかかっているのかを把握しやすくなるでしょう。
労働時間のモニタリングは、単に記録しているだけでは意味がありません。必要に応じてフォローを入れたり、業務分担を見直したりすることも大切です。
従業員が出産・育児を経て働き続けられる環境を整えることも、ウェルビーイングを実現する上で重要な要素です。社内に託児所を開設することにより、保育園の待機児童問題や子供の成長に合わせた働き方への対応も実践しやすくなるでしょう。
託児所の開設とあわせて、時短勤務や時差出勤の制度を導入するのも効果的な施策といえます。従業員のライフステージの変化に合わせて、柔軟に働き続けられる環境を整備していくことが大切です。
ライター:株式会社ネオマーケティング