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リスキリングとは?意味やメリット、進め方、具体例を解説

公開日:2023.05.31

リスキリングとは「新しい知識やスキルを獲得すること」ですが、リカレント教育や生涯学習と明確に区別できているでしょうか。リスキリングの定義やメリット・デメリット、具体的な進め方とあわせて、企業の具体的な取り組み事例を紹介します。

リスキリングという言葉をよく耳にするようになったものの、「学び直し」とどう違うのか曖昧なままになっていませんか? リカレント教育や生涯学習など、リスキリングと混同しやすい言葉もあるため、より分かりにくいと感じるかもしれません。

今回は、リスキリングの定義と他の用語との違い、企業がリスキリングに取り組むメリット・デメリット、具体的な進め方について解説します。実際にリスキリングを導入し、成果を挙げている企業の具体例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

リスキリングとは

はじめに、リスキリングの定義や、学びに関わる他の用語との違いを整理しておきましょう。リスキリングの目的や位置づけを明確にしておくことが大切です。

リスキリングの定義

リスキリング(Re-skilling)とは、「スキルの再習得」という意味の言葉です。経済産業省では、リスキリングを次のように定義しています。

「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」
(出典:経済産業省「リスキリングとは ―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」 2021年2月26日)

つまり、既存のスキルだけで業務に対処するのではなく、新たなスキルを体得することで対応可能な業務の幅を広げていくことがリスキリングの目的といえます。近年は企業のDX推進が注目を集めていることから、DX推進に向けた取り組みの一環として捉えられるケースも少なくありません。

リカレント教育との違い

リカレント教育も広い意味での「学び直し」であることは、リスキリングとの共通点です。ただし、リカレント教育はリカレント(recurrent=繰り返す)という言葉が象徴するように、学生時代に限らず社会人になってからも必要なタイミングで職場を離れて大学などの教育機関で学び直すことを前提にしています。これに対し、リスキリングは在職のまま新たに必要となるスキルの獲得を目指すことを前提としている点で異なります。

リカレント教育は個人の学びそのものを重視していることが、リスキリングとは大きく違う点です。

アンラーニングとの違い

アンラーニングとは「学習棄却」という意味を表す言葉です。既存の知識やノウハウをあえて一度捨て、新たな知見を取り入れる余地を作ることを表します。固定観念に囚われないために知識を「捨てる」アンラーニングに対して、スキルの「習得」を目指すのがリスキリングです。

私たちはしばしば既存の価値観や思考に囚われるあまり、柔軟な発想ができなくなりがちです。たとえ苦労して習得した知識であっても、変化が激しい時代には急速に古くなっていくでしょう。リスキリングに取り組むにあたって、アンラーニングが求められるケースもあるはずです。

生涯学習との違い

生涯学習とは、学生時代など特定の時期に限らず生涯を通じて学び続けることを表す言葉です。文部科学省では、生涯学習を次のように定義しています。

「一般には人々が生涯に行うあらゆる学習,すなわち,学校教育,家庭教育,社会教育,文化活動,スポーツ活動,レクリエーション活動,ボランティア活動,企業内教育,趣味など様々な場や機会において行う学習」
(出典:文部科学省「平成30年度文部科学白書 」)

リスキリングが業務に必要なスキルの習得を志向するのに対して、生涯学習は人生をより豊かにするための個人的な学びを奨励している点が異なります。

企業がリスキリングに取り組むメリット

では、なぜ企業はリスキリングに取り組むべきなのでしょうか。リスキリングを導入する主なメリットについて見ていきましょう。

1.人材不足解消に向けた対応策になる

IT人材不足は年を追うごとに深刻化しています。2019年の時点でIT人材の「量」に不足を感じている企業は89.0%、「質」に不足を感じている企業は90.5%にのぼります(※)。この傾向は年々強まっており、近い将来デジタル人材の不足は業種を問わず大きな懸念事項の1つとなっていくと考えられているのです。

予想されている人材不足に対応するために、人材を育成していくのは合理的な判断といえます。人材不足の解消に向けた対応策になることは、企業がリスキリングに取り組むメリットといえるでしょう。
※独立行政法人情報処理推進機構「IT人材白書2020 」より

2.従業員エンゲージメントが向上する

企業が従業員のスキルアップをサポートし、将来的なキャリアアップを応援することによって、従業員の勤務先に対する愛着や帰属意識を強化することにつながります。従業員は現在の職場で働く意義をより強く見いだすようになり、結果として自社のために貢献したいという思いを強めていくでしょう。

従業員エンゲージメントが向上すれば、業務のパフォーマンスがいっそう高まるだけでなく、離職率の抑制にもつながるはずです。従業員エンゲージメントが向上することは、企業がリスキリングを推進するメリットの1つといえます。

3.人材の安定的な確保につながる

リスキリングが功を奏すれば、自社が必要とするスキル要件を満たす人材を次々に採用する必要がなくなります。新たな人材を採用しなくても、社内の異動によって必要な人員をまかなえる確率が高まるからです。

人材採用数を抑制できれば、人材の安定的な確保にもつながります。たとえ採用活動を展開しても、実際に優秀な人材を確保できるかどうかは不透明です。リスキリングの取り組みは、人材採用の難易度が高まるこれからの時代に備えた対応策としても有効でしょう。

4.企業文化の維持・醸成につながる

リスキリングによって既存の従業員が新たな知識・スキルを体得すれば、自社の業務内容を熟知した従業員に引き続き業務を担当し続けてもらえます。業務フローを深く理解している従業員が長年にわたって業務に従事することは、企業文化の維持・醸成にもつながるでしょう。

会社組織を構成しているのはあくまでも「人」であり、スキル要件を満たせば誰が業務を担当してもよいわけではありません。リスキリングは既存の従業員を大切にし、企業文化を育んでいくためにも重要な取り組みとなるはずです。

企業がリスキリングに取り組むデメリット

リスキリングには多くのメリットがある一方で、企業にとってデメリットとなり得る面も持ち合わせています。企業がリスキリングに取り組む主なデメリットは次の通りです。

1.教育プログラムの整備が必要

リスキリングを導入するといっても、新しい知識・スキルであれば何でもよいというわけではありません。事業計画と連動した教育プログラムを立案し、体得したスキルが実際の業務で活かせる仕組みを構築する必要があります。

しかも、直近の事業計画だけでなく、将来を見据えた中長期の事業計画を踏まなくてはなりません。教育プログラムの整備は決して単純な工程ではないことから、企業にとって少なからず負担になることが想定されます。

2.従業員のモチベーション維持が容易でない

リスキリングは長期間の取り組みになることから、モチベーションを維持するのが難しい場合があります。実際に教育プログラムが始まると、習得速度や業務への活用の度合いには個人差が生じることが予想されます。効果を実感できない従業員はとくに、リスキリングに対するモチベーションを失いやすいでしょう。

企業としては、こうした従業員が現れることを想定し、教育プログラムとあわせてモチベーション管理の仕組みも考えていく必要があります。

3.実施に際してコストがかかる

リスキリングに必要なインフラの導入や、教育プログラムの継続的な運営にコストがかかるのは避けられません。従業員が自発的に取り組みやすい教育プログラムを提供するには、複数のプログラムを並行して進めざるを得ないケースも多いでしょう。プログラム数が増えれば増えるほど、コストがかさむことになります。

リスキリングは中長期的な取り組みとなるため、長期間にわたってコストがかかり続けることはデメリットといえるでしょう。

リスキリングの取り入れ方

リスキリングを進めていくには、具体的にどのような手順を踏めばよいのでしょうか。取り組むべきことを順に見ていきましょう。

1. 従業員が習得すべきスキルを見極める (現状把握)

従業員にとって現状不足しているスキルや、今後身につけていくべきスキルを見極める必要があります。事業計画も照らし合わせながら、近い将来求められる可能性の高いスキルに対して、足りない・十分とはいえないスキルは何かを検討しましょう。

先入観やイメージに囚われないようにするには、客観的なデータや分析ツールを活用することも大切です。必要に応じて従業員にもヒアリングを実施し、教育プログラムに参加する従業員にとって納得感のある内容を絞り込んでいく方法もあります。

2. 教育プログラムを作成する (計画)

習得すべきスキルを絞り込んだら、次に教育プログラムの作成を進めましょう。従業員が主体的にプログラムを選択できるようにするには、プログラムのラインナップが複数用意されている必要があります。従業員ごとの知識量やスキルレベルに見合うように、できるだけ豊富なラインナップを用意しましょう。

教育プログラムを策定する際には、全体の学習期間と学習効果を見極める時期を決めておくことも大切なポイントです。ゴールを決めて取り組むためにも、スケジュールもあわせて検討してください。

3. 使用する教材・コンテンツを決める(戦略)

教育プログラムを実現するために使用する教材やコンテンツを決めていきます。自社で教材を作成するほか、eラーニングや外部機関の研修プログラムを活用するのもおすすめの方法です。必ずしも自社ですべての教材・コンテンツをまかなう必要はありません。

教材や教育コンテンツを準備する際には、時間・コストと効果のバランスを考慮することが大切です。必要な準備を整えるのに時間を費やしてしまい、リスキリングのスタートが遅れることのないよう注意しましょう。

4. 従業員に取り組んでもらう (実施)

取り組むべきことが決まったら、いよいよ従業員に学習を進めてもらいます。ただし、リスキリングへの取り組みが各自の担当業務を圧迫することのないよう、十分に気を配ってください。必要に応じて業務時間をリスキリングに充てることも検討する必要があるでしょう。

また、リスキリングにおいては教材やコンテンツを「与えっぱなし」にしないことが大切です。定期的に効果測定やヒアリングを実施し、順調に進んでいるか確認していく必要があります。

5. 習得したスキルを実務に活かす

リスキリングを通じて習得した知識や体得したスキルを、実務で活かしていくことが非常に重要です。業務に活かせることを従業員が実感すれば、「学んでよかった」「効果があった」と思えるでしょう。

こうした「学び」と「実践」のつながりが、従業員を自発的な学びへと導くきっかけとなります。リスキリングで学んだことを実務で活かせるよう、意識的に業務の割り振りを決めていくのも1つの考え方です。

リスキリングの具体例

さまざまな業界において、実際に行われたリスキリングの取り組み事例を紹介します。具体的な取り組み方や活用した教材など、自社で取り入れられそうな要素もあるはずです。ぜひリスキリングに取り組む際のヒントにしてください。

動画コンテンツを活用した例

1つめは金融業界の事例です。グループ従業員を対象にDX教育を実施し、数万人規模のリスキリングに取り組みました。これほど多くの従業員に対してリスキリングを導入できた理由の1つとして、10分程度に編集された短い動画の存在が挙げられます。計5時間におよぶ動画コンテンツを1本10分程度に切り分けて提供することで、従業員が手軽に視聴しやすくしたのです。業務の合間など、わずかな時間をリスキリングに充ててもらうには有効な方法といえます。

座学と実践を組み合わせた例

2つめの事例はメーカー業界です。リスキリングを価値創出のための取り組みと位置づけ、DX構想策定力やデザイン思考を座学で受講できる仕組みを整えました。また、学んだ知識を実践で活かせるよう、実際のDXプロジェクトへの参画があらかじめプログラムに組み込まれているのです。座学だけでは実感しにくい部分を、実践を通じて習得しやすいプログラムといえます。教育プログラムに実務を組み込む試みは、他業界においても実践できるのではないでしょうか。

適性の発掘に取り組んだ例

3つめの事例は保険業界です。リスキリングに取り組むにあたって3種類のテストを用意し、DX人材としての適性の見極めを行いました。各従業員の適性に合った教育プログラムを実施することで、学習効果を高めたのです。求められるスキルありきで考えるのではなく、従業員の適性を考慮して教育プログラムを策定することは、あらゆる業界の企業において取り入れていきたい施策といえるでしょう。

外部団体と連携して取り組んだ例

4つめの事例はソフトウェア業界です。さまざまな企業をはじめ、自治体や教育機関、NPOなどと連携した就労支援プロジェクトを発足し、DX人材の長期的な育成に取り組んでいます。自社に留まらず多方面の企業や団体と連携することで、多角的な視点を取り入れられるからです。リスキリングの取り組みは社内のみで完結させる必要はありません。外部のリソースを積極的に活用し、継続的なリスキリングを実現した事例といえます。

まとめ

リスキリングは新たなスキルを体得することにより、将来にわたって対応可能な業務の幅を広げていくための試みです。事業計画とも密接に関わっていることから、教育プログラムや使用する教材・コンテンツの検討は慎重に進める必要があります。企業がリスキリングに取り組むメリット・デメリットの両面を加味した上で、導入すべき教育プログラムを決定していく必要があるでしょう。

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