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インボイス制度の導入前に必要な対策とは?個人事業主はどうすればいい?

公開日:2023.04.10

個人事業主・フリーランスなどで免税事業者の方は、インボイス制度が導入される2023年10月1日までに何を準備すればよいのでしょうか。インボイス制度の導入前に必要な対策について、わかりやすく解説します。

インボイス制度が導入されるにあたって、どのような対策や準備が必要になるのか知りたいと思っていませんか? いつまでに何をすればいいのか、明確に把握しておきたいと感じている方も多いでしょう。
今回は、インボイス制度の導入に向けて必要な対策についてわかりやすく解説します。個人事業主・フリーランスの方をはじめ、免税事業者の方はぜひ参考にしてください。

インボイス制度とは

インボイス制度とは、2023年10月1日より導入される「適格請求書等保存方式」の別称です。インボイス制度の導入以降は、適格請求書(インボイス)を発行できるのは適格請求書発行事業者のみとなります。
まずは、インボイス制度が導入される背景と導入によって変わること、インボイス制度が適用される条件について確認しておきましょう。

消費税と仕入税額控除

これまでも、消費税の課税事業者は、取引で発生した消費税を毎年3月末までに納付することになっています。ただし、取引で発生した消費税の全額を納付するとは限りません。仕入れや経費などの支払時に発生した消費税額を、売上で受け取った消費税から差し引くことが認められているからです。このように、受け取った消費税から支払った消費税を差し引くことを「仕入税額控除」といいます。

インボイス制度の導入によって変わること

インボイス制度の導入以降、仕入税額控除の適用を受けるには適格請求書(インボイス)の発行・保存が必須となります。個人事業主・フリーランスに関しても、取引先・クライアントに提出する請求書が適格請求書の条件を満たしていなければ、仕入税額控除ができません。つまり、インボイス制度の導入前と比べて消費税の納税額が増えてしまうのです。

2023年10月1日以降、仕入税額控除を受けるには2023年9月30日までに適格請求書発行事業者として登録しておく必要があります。納付すべき消費税額に直接関わるため、期限までに必ず対応することが大切です。

なお、適格請求書発行事業者の登録申請は当初2023年3月31日が期限とされていました。その後、令和5年税制改正大綱にて「2023年9月30日までに申請されたものは2023年10月1日に登録できる」と変更されている点に注意してください。現在免税事業者の方が2023年9月30日までに適格請求書発行事業者登録申請書を提出した場合、2023年10月1日より課税事業者となります。課税事業者選択届出書をあらためて提出する必要はありません。

インボイス制度が適用される条件

適格請求書発行事業者として登録するには、消費税の課税事業者であることが条件となります。消費税の免税事業者はインボイス制度の対象外です。したがって、これまで免税事業者として取引してきた個人事業主・フリーランスの方は、インボイス制度の導入までに課税事業者になるかどうかを選択しなければなりません。

本来、課税事業者になるには「課税事業者選択届出書」を税務署に提出する必要があります。ただし、2023年9月30日までに「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出した場合、インボイス制度の導入以降は自動的に課税事業者へと移行可能です。課税事業者選択届出書をあらためて提出する必要はありません。

インボイス制度に向けた対策を講じないとどうなる?

インボイス制度に向けた対策を講じなかった場合、具体的にどのような事態が生じるのでしょうか。想定される状況として、次の3点が挙げられます。

①納税額が増える可能性がある

適格請求書発行事業者として登録しない場合、仕入税額控除が適用されません。本来であれば、消費者が負担すべき消費税と仕入時にかかった消費税が二重に徴収され、納税額が増える可能性があります。インボイス制度の導入以降も仕入税額控除の適用を受けるには、適格請求書発行事業者としての登録が必須です。

なお、すでに消費税の課税事業者として取引している事業者に関しても、インボイス制度の適用を受けるには適格請求書発行事業者の登録申請書を提出する必要があります。課税事業者であれば、自動的にインボイス制度が適用されるわけではない点に注意してください。

②経理業務が煩雑化する

適格請求書には必須の記載事項が定められています。具体的には、従来の区分記載請求書で必須とされていた記載事項に加え、「登録番号」「適用税率」「区分ごとの消費税額」を記載しなければなりません。

【区分記載請求書の記載事項】

  • 請求書発行事業者の氏名または名称
  • 取引年月日
  • 取引の内容(軽減対象税率の対象品目である旨)
  • 税率ごとに区分して合計した対価の額
  • 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

【適格請求書に追加される記載事項】

  • 適格請求書発行事業者の登録番号
  • 適用税率
  • 税率ごとに区分した消費税額等

請求書を作成する際、上記の条件を満たしているかチェックする必要があります。インボイス制度の導入に向けた対策が不十分だと、適格請求書の条件を満たしていない請求書を発行してしまう可能性も否定できません。

③取引を敬遠される恐れがある

インボイス制度に未対応のまま放置していると、取引先が不利益を被る恐れがあります。適格請求書を発行できない事業者との取引では仕入税額控除が適用されないため、消費税の納税額が増してしまうからです。

したがって、新たな取引先を選定するにあたり、インボイス制度に対応していない事業者は敬遠される可能性があります。消費税が二重に徴収されるのを回避するために、適格請求書が発行できる事業者と優先的に取引したいと考えるのは自然な心境といえるでしょう。適格請求書を発行できないことで、将来的に取引が減少することも想定されるのです。

インボイス制度の導入に向けて必要な対策

インボイス制度の導入に向けて、具体的にどのような対策を講じればよいのでしょうか。現時点で免税事業者として取引している個人事業主・フリーランスの方が、必ず講じておくべき対策は次の3点です。

インボイス制度の導入スケジュールを把握する

はじめに押さえておくべき事柄は、インボイス制度の導入スケジュールです。適格請求書発行事業者の登録申請期間、インボイス制度の開始時期、経過措置期間については必ず把握しておきましょう。

【インボイス制度に関して押さえておくべきスケジュール】

  • 適格請求書発行事業者の登録申請:2023年9月30日
  • インボイス制度開始:2023年10月1日
  • 経過措置期間:2023年10月1日〜2029年9月30日

経過措置とは、インボイス制度の導入後も仕入税額の一部を控除できる仕組みのことです。具体的には、インボイス制度導入から3年間(2026年9月30日まで)は仕入税額相当額の80%、その後3年間(2029年9月30日まで)は仕入税額相当額の50%を控除できます。段階的に控除割合が下がっていき、2029年10月1日以降は仕入額控除が適用されなくなる点に注意してください。

適格請求書の発行可否が取引に影響するか確認する

既存の取引先と今後も取引を続けていくにあたり、適格請求書を発行できるほうが望ましいかどうかを確認しておくことをおすすめします。たとえば、取引先と相談した結果「発行できるのがベター」という結論に達したのであれば、期限までに適格請求書発行事業者の登録申請を行う必要があるでしょう。反対に適格請求書の発行可否が取引にあまり影響しないようなら、経過措置期間中は様子を見るという対応でもよいかもしれません。

ただし、将来的に発生する可能性のある新規取引も視野に入れて総合的に検討することが大切です。前述の通り、適格請求書を発行できる事業者と優先的に取引する事業者が現れる可能性もあります。業種や取引内容によって状況は異なりますが、取引先の負担が増すことにならないか慎重に判断する必要があるでしょう。

必要に応じて適格請求書発行事業者として登録申請する

適格請求書発行事業者として登録するのがベターであれば、2023年9月30日までに登録申請を済ませましょう。現在免税事業者の場合は、2023年9月30日までは免税事業者として取引を継続することも可能です。課税事業者選択届出書を提出しない場合、2023年10月1日より自動的に課税事業者となります。

また、簡易課税制度の活用も併せて検討しましょう。簡易課税とは、納付すべき消費税額の算出を簡素にするための措置のことです。売上にかかる消費税額にみなし仕入率を乗じて消費税を算出します。簡易課税制度を活用する場合、2023年12月31日までに「簡易課税制度選択届出書」を提出してください。

インボイス制度と下請法・独占禁止法

インボイス制度は、個人事業主・フリーランスなど個人で事業を営む方々にとって重要な課題をはらんでいます。従来は免税事業者として取引していた方々が課税事業者になることで、これまで納税が免除されていた消費税を納める義務が生じるからです。

一方で、インボイス導入後も免税事業者として取引を続ける場合、取引停止や値下げといった要求をされるのではないかと不安に感じている方も少なくないでしょう。そこで、インボイス制度と関わりのある法律について解説します。

下請法・独占禁止法とは

適格請求書発行事業者にならないことを理由に取引停止や値下げを要求すると、下請法や独占禁止法に抵触する恐れがあります。

下請法とは、弱い立場に置かれているケースが少なくない下請事業者を保護するための法律です。独占禁止法は、公正かつ自由な競争の促進を主な目的として定められています。取引先の要求によっては、下請法または独占禁止法、状況しだいでは両方の法律に触れる可能性があるのです。

下請法に抵触する可能性のあるケース

下請法に抵触する可能性がある代表的なケースとして「買いたたき」が挙げられます。

たとえば、仕入税額控除を適用する必要があると主張し、取引先に課税事業者になるよう要求した場合を考えてみましょう。これまで免税事業者だった取引先としては、課税事業者になることで消費税を納める義務が生じます。納税額が増えることがほぼ確実とわかっていながら、発注単価を据え置くようであれば買いたたきに相当する恐れがあるのです。

適格請求書発行事業者として登録するかどうか、課税事業者になるかどうかは、あくまでも事業者が任意で判断すべき事柄です。取引先に対して圧力をかけたり、決断を迫ったりすることは認められていません。こうした行為は下請法に抵触する可能性があることを押さえておきましょう。

独占禁止法に抵触する可能性のあるケース

独占禁止法に抵触する可能性のあるケースとしては、取引停止や取引額の減額を通告することが挙げられます。

一例として、取引先に対し「課税事業者にならないのであれば今後の取引継続は見合わせる」と伝えたり、「適格請求書を発行しない場合は発注額の値下げも含めて検討する」と通告したりすれば、公正かつ自由な競争を妨げる要因になり得ます。前述の通り、課税事業者になるべきか、適格請求書を発行すべきかに関しては事業者が独自に判断すべき事柄です。取引先に強要したり、相手先にとって不利な条件を提示したりすれば不当な競争にあたる恐れがあります。

個人事業主・フリーランスの方々は、インボイス制度と関わりのある法律についても理解を深め、取引先が不当な要求をしていないか適切に判断することが大切です。

パターン別・免税事業者のインボイス制度への対策

免税事業者の方がインボイス制度にどう対応するのが得策か、パターン別にまとめました。実際にどう対応するべきかに関しては事業内容や取引の状況によって異なるため、一般論として参考にしてください。

1. 適格請求書の発行可否が取引に影響しない可能性が高い場合

適格請求書を発行できる・できないを問わず、現状の取引に影響を及ぼさない可能性が高いようであれば、登録申請を急ぐ必要はないでしょう。インボイス制度導入後も、引き続き免税事業者として取引を続けるのも選択肢の1つといえます。

ただし、将来的に獲得する可能性のある新規取引も視野に入れて検討することが重要です。事業者によっては、インボイス制度に対応済みの個人事業主・フリーランスに対して優先的に仕事を依頼する可能性も否定できません。よって、適格請求書の発行可否が取引にまったく影響しないかどうか、確実とは言い切れないようであれば、次に挙げる「2」以降の対応を検討しておくほうがよいでしょう。

2. 適格請求書の発行が必要になるか不明の場合

適格請求書の発行が必須条件となるかどうか見通しが立たない場合、インボイス発行事業者として登録申請を行うのがベターでしょう。取引先によっては、適格請求書が発行できる事業者へ優先的に業務を発注することも考えられます。また、将来的に新規取引先から適格請求書の発行を求められる可能性がまったくないとは言い切れません。

適格請求書を発行する必要がまったくないと断定できないようなら、適格請求書発行事業者の登録申請を行い、2023年10月1日より課税事業者になることをおすすめします。今後納税することになる消費税額と、新たに受注する可能性のある取引を逃す機会損失を天秤にかけ、総合的に判断することが大切です。

3. 業種によっては簡易課税制度の活用を前向きに検討する

みなし仕入率が比較的高い業種であれば、簡易課税制度のメリットを活かせる可能性があります。事業区分ごとのみなし仕入率は下表の通りです。

事業区分 該当する事業 みなし仕入率
第1種事業 卸売業 90%
第2種事業 小売業 80%
第3種事業 農業・林業・漁業
鉱業・建設業・製造業
電気業・ガス業・熱供給業・水道業
70%
第4種事業 その他の事業(飲食店など) 60%
第5種事業 運輸通信業・金融業・保険業・サービス業 50%
第6種事業 不動産業 40%

原則課税とみなし仕入率が大きく乖離していない場合や、みなし仕入率の適用により控除額が大きくなる可能性がある場合は、簡易課税制度の活用も前向きに検討しましょう。納めるべき消費税額の算出が簡素になり、経理処理の負担を軽減できるはずです。

まとめ

インボイス制度は課税事業者のみに適用されることから、これまで免税事業者として取引してきた個人事業主・フリーランスの方々は適格請求書発行事業者になるべきか判断が求められることになります。今後の取引に少なからず影響をもたらす可能性があることから、必ず期限内に結論を出した上で必要な対策を講じておきましょう。

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