COLUMN
公開日:2023.05.31
DX推進の準備が整っている企業として国の認定を受けられるDX認定制度。制度の概要や認定事業者になるメリット、具体的な申請方法についてまとめました。認定レベル・認定基準とともに解説します。
DX推進に多くの企業が関心を寄せる中、DX認定制度が注目を集めています。事業者様の中には、DX認定制度がどのような制度なのか、認定事業者になるとどのようなメリットを得られるのか、疑問に感じている方もいるでしょう。
今回は、DX認定制度の概要と認定事業者になる具体的なメリット、認定レベル・認定基準について詳しく解説します。実際に申請する際の手順も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
はじめに、DX認定制度の概要を確認しておきましょう。DX認定制度が創設された背景や、制度の主な目的について理解を深めておくことが大切です。
DX認定制度は、2020年5月施行の「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」にもとづく制度です。申請事業者の審査は情報処理推進機構(IPA)が行い、経済産業省が認定事業者を決定します。
DX認定事業者はIPAのWebサイト「DX推進ポータル」に掲載され、国に認定されたことが公開されます。DX推進の準備が整っている企業として、広く認知されるのです。2023年4月時点での認定事業者数は654社 にのぼり、今後も増えていくことが見込まれます。
DX認定制度が創設された背景には、国が掲げる「Society5.0」があります。Society5.0とは、IoTやAIといった先進技術を基盤に人が快適に暮らせる新しい社会システムを目指すコンセプトです。
【Society5.0の位置づけ】
Society4.0から5.0への大きな変革に備え、企業においてもDX推進に取り組むことが求められています。DX認定制度の背景には、Society5.0の実現に向けた社会基盤を固めるという大きな目的があるのです。
DX認定制度の主な目的は、企業のDX推進に向けた取り組みを後押しすることです。経済産業省では、DX(デジタルトランスフォーメーション)を次のように定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
(デジタルガバナンス・コード2.0 より)
DX認定制度では、DX推進に向けた準備が整っている事業者(DX-Ready)が認定レベルとして用意されています。DX推進によってめざましい成果を挙げた企業だけを評価することが目的ではなく、DX推進に向けた準備も認定基準に含まれている点が特徴です。
DX認定事業者になることで、具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。非認定事業者と比較して優位性を発揮できるのは、主に次の5点です。
DX認定を受けるには、国が定めた審査を通過しなくてはなりません。DX推進に向けた準備が整っている企業として認められなければ認定されることはないのです。
DX認定事業者はIPAのWebサイト内にある「認定事業者の一覧」に掲載され、DX推進に積極的な企業として広く認知されます。また、DX認定ロゴマークを自社サイトや名刺、パンフレットなどに掲載することが認められるのです。国に認定された企業として信頼性が高まり、企業イメージの向上に寄与する効果が期待できるでしょう。
DX認定事業者には、DX投資促進税制による税額控除が適用されます。課税の特例の内容は下表の通りです。
対象設備 | 税額控除 | 特別償却 |
---|---|---|
ソフトウェア 繰延資産 機械装置 器具備品 |
3% | 30% |
5% (他社とのデータ連携に係るもの) |
※設備投資総額の上限:300億円
(財務省「令和3年度税制改正」 より)
DX投資促進税制にもとづく控除には、DX認定事業者であること以外にも事業適応計画などにさまざまな条件があります。DX認定事業者であることは必須条件の1つのため、税制控除を受けられる可能性があることはメリットといえるでしょう。
中小企業に関しては、DX認定事業者となることで設備投資に必要な資金の融資支援を受けられる場合があります。具体的には、日本政策金融公庫の基準利率が優遇される可能性があるのです。
中小企業信用保険法においても、DX推進に関わる設備投資に対して追加保証や保証枠の拡大が適用されます。こうした融資に関する支援を受けられることは、DX認定事業者となるメリットの1つといえるでしょう。
東京証券取引所では、優れたデジタル活用の実績が表れている企業を各業種から1〜2社選出し、DX銘柄として認定しています。DX認定事業者であることは、DX銘柄に選出される上で必要な条件の1つです。
DX銘柄に選出されれば、投資家などステークホルダーの評価を高める効果が期待できます。企業としての信頼性やブランド力を向上させる上で、DX認定がプラスに作用することは十分に考えられるのです。
DX認定を取得するには、審査に向けて申請チェックシートを記載する必要があります。申請チェックシートの項目にはDX推進に必要な条件がまとめられているため、チェックしていく過程でDX推進に向けた自社の課題が整理されていくでしょう。
現状、自社がDX推進に取り組む上で必要な要件を満たしているのか、客観的に判断するための材料は決して多くありません。課題を早期に把握しておくことで、先手を打って対策を講じやすくなり、DX認定の取得は、取得そのものだけでなく過程にも大きな意義があるでしょう。
DX認定には4つの認定レベルと評価基準が定められています。審査を通過する上で、これらを理解しておくことは欠かせない条件といえるでしょう。
DX認定レベルは次の通りです。
上記のうち、DX-ReadyまでがDX認定事業者として認められます。「DX-Ready以前」とは、DX推進に向けた取り組みが十分でなく、改善の余地があることを示しているからです。
DX-Excellent企業はDX推進による実績がとくに優れている企業が認定されます。DX-Emerging企業は期待値が高いと認定された企業に限り与えられる認定です。DX注目企業やDX銘柄に選ばれるには、DX-Excellent企業やDX-Emerging企業に認定される必要があります。 多くの企業は、まずDX-Ready認定を目指すことになるでしょう。
DX認定制度の認定基準は「デジタルガバナンス・コード」に記載されています。デジタルガバナンス・コードとは、デジタル社会において経営者に求められる対応を明文化したものです。
DX認定事業者となるには、デジタルガバナンス・コードの基本事項に対応している必要があります。裏を返すと、デジタルガバナンス・コードの要件を満たす組織を目指すことが、DX認定を受けるために必要な取り組みといえるでしょう。
DX認定制度の申請は、大きく分けて3つのステップで進める必要があります。申請を進める際の流れを掴んでおきましょう。
DX認定基準はデジタルガバナンス・コードに記載されています。デジタルガバナンス・コードに記載の基準を満たしているか確認しておくことで、申請チェックシートを記載する際の不備を未然に防ぐことが目的です。
デジタルガバナンス・コードは、次の4つの柱立てになっています。
項目 | 認定基準 |
---|---|
ビジョン・ビジネスモデル | 経営ビジョンおよびビジネスモデルの方向性を公表しているか。 |
戦略 | デジタル技術を活用する戦略を公表しているか。 |
成果と重要な成果指標 | 戦略の推進に必要な体制・組織および人材の育成・確保ができているか。 |
ガバナンスシステム | ITシステム・デジタル技術活用環境の整備に向けた方策を示しているか。 |
上記の認定基準を満たしているか、項目ごとに確認を進めておきましょう。
次に、認定申請書の作成に移りましょう。認定申請書・申請チェックシートはIPA「DX認定制度」のページにてダウンロードできます。
IPAのWebサイトでは、申請要項(申請のガイダンス)も公開しています。申請書の記入方法やよくある不備の例なども詳しく記載されているため、必ず熟読した上で認定申請書を作成してください。
認定申請書と申請チェックシートの記入が完了したら、IPAのWebサイトから申請手続きを行います。申請時にはgBizIDが必要になるため、事前にIDを取得しておきましょう。gBizIDが身分確認となるため、申請書類に押印は不要です。
「申請・届出を行う」から申請書類・申請チェックシートと、必要に応じて補足資料をアップロードすれば申請手続きは完了です。標準的な審査期間は60日ですが、土日を含まない日数のためカレンダー上では約3カ月間となる点に注意してください。
エイジェックグループでは、DX認定に向けたサポートサービスを提供しています。ここまでに解説してきた通り、DX認定を取得するまでにはさまざまな手順を踏む必要があり、満たすべき要件も多岐にわたるのが難点です。エイジェックグループの豊富なノウハウと実績を活かしたDX認定サポートの特徴を紹介します。
DX認定申請に向けて、現状の組織や業務、ITの利用状況といった現状の課題を把握します。審査では申請チェックシートも審査対象となりますが、チェックシートありきで対策を講じるのは効率的とはいえません。
DX推進の本来の目的を見失わないためにも、現状の課題を明確化した上でDX推進の方向性を定めていく必要があります。客観的な視点で診断を行うことにより、事業者様が抱えている潜在的な課題も含めて明確化しておくことがDX診断の目的です。
次に、DX推進の全体像を策定していきます。デジタル技術を経営や業務に活用する上でどのようなDX戦略を講じるべきか、DX戦略を実現するにはどのような体制が必要かなど、DX推進の基盤を固めておくために必要なプロセスです。
具体的にどのようなデジタル技術を活用すべきかについても、DX構想の段階で検討を重ねます。技術ありきで考えるのではなく、DX診断の結果を元に必要なデジタル技術の導入・活用を総合的に判断する点がエイジェックグループのDX構想の特徴です。
DXの推進にあたって求められるセキュリティ対策は、企業規模によって異なります。大企業においてはリスク分析や監査、緊急時対応などISMSの有効性評価などを見直しておくことが大切です。中小企業では、セキュリティアクション二つ星の自己宣言に取り組み、DX推進に必要なセキュリティ対策を講じていきます。
セキュリティ対策は、デジタルガバナンス・コードにおいても「ガバナンスシステム」の認定基準の1つです。企業規模・業界ごとに求められる要件を見極め、必須のセキュリティ対策を提案します。
顧客視点に立った業務改善や、DXの主旨である経営革新を推進するための「DXチーム」を編成します。DX構想やセキュリティ対策の内容をチームで共有し、認定申請に向けた準備を進めていくためのチームです。
DX推進は全社的な取り組みとなるため、部門間での連携や協力体制は欠かせない要素といえます。DXチームが窓口となり、DX認定申請に向けた準備をサポートします。
DX診断、DX構想、セキュリティ対策の内容を踏まえて、DX認定の申請作業の支援を行います。DX認定取得の条件となっている経営者による情報発信など、申請に必要な要件を満たすアクションについても支援の対象に含まれます。
また、DX認定後にDX推進を実践していくプロセスにおいても、伴走支援するコンサルティングサービスも提供しています。DX推進を実現し、DX認定の更新に向けて着実に成果を上げていくためにも、ぜひご活用ください。
ライター:株式会社ネオマーケティング